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全国シェルターシンポジウム2005inあいちに参加して

 全国シェルターシンポジウム2005inあいちが、「愛・地球博」で世界中から注目されている名古屋市にある名古屋国際会議場にて、9月17日(土)・18日(日)の2日間に渡り開かれた。
[1]基調講演とシンポジウム
 平成13年、国において「配偶者からの暴力防止法」(いわゆるDV法、以下、DV防止法)が制定され、人権の尊重と、男女共同参画社会に向けて、女性に対する(特に配偶者に対する)暴力をなくすための意識改革や、犯罪としての取り締まりが始まった。そして平成16年に「改正配偶者からの暴力防止法」(いわゆる改正DV防止法−以下、改正DV防止法)が施行され、DVの防止と被害者の保護から、DV被害者の自立支援にも重きを置かれる。さらに、改正DV防止法には、DV被害者の自立支援を加えた施策の実施に関する基本計画を策定することが明記され、自治体でもこの基本計画の策定が始まっている。この基本計画の国の方針には、「加害者更正への取り組み」が含まれることもあり、各自治体の基本計画にもこの加害者更正、加害者の処遇についても取り組む方針となる。
 そこで、DV関連の企画といえば、DV対応・DV解決において、主に被害者の安全確保・人権救済・自立支援の角度から検討されていたが、今回の基調講演及びシンポジウムでは、視点を変え「加害者の側からの処罰や処遇」について考える内容にしていた。
 もちろんこの視点は、包括的なDV対応やDV解決に必要ではあるが、加害者の問題にはともすれば、被害者の人権を傷つけかねないという一面もあり、十分注意しなければならない。
 このような背景を踏まえ基調講演には、アメリカ合衆国ニューヨーク州より、家庭裁判所判事・高等裁判所判事を歴任後、裁判所DV関連諮問委員を務め、裁判所教育センターと弁護士として活躍されているマージョリー・D・フィールズを迎えてお話を伺った。
 フィールズ女史は、アメリカだけでなく、英国、アジア、アフリカ諸国のDV裁判やDVに関わるコンサルタントも勤める傍ら、家族法やDV問題などの著書多数である。
 フィールズ女史からは、加害者プログラムを初期の段階からDV対応やDV解決のプロセスに取り入れており、その効果は実例には興味深いものがある。さらに近年、加害者プログラムを積極的に取り入れたDV対応計画を策定した英国の各都市(ロンドン、エジンバラ等)の取り組みを見ても、加害者プログラムの目的は、DVの再発防止であり、被害者のさらなる安全確保である。
 現在、日本における加害者更正のためのプログラムは、一部民間における更正のための相談の実施のみであり、国においてなお、加害者更正プログラムについては、実施にあたっての調査研究が進められているところである。
 基調講演の中でも、強調された「加害者プログラムの設計・運用にとっても最も重要な点は被害者の安全確保」である点を見落として欲しくない。
 2年前大阪で開催された第3回全国シェルターシンポジウムでは、被害者保護をしている施設の人達が、「被害者支援を取り組む者(所)が加害者更正に取り組むことに大きな抵抗を覚える」と訴えたことがとても印象深かった。
 当時、私は、その意見に共感したものだったが、2年経って今回名古屋での第5回全国シェルターシンポジウムでは、加害者側からの視点がテーマであることにDV防止の取り組みに対する進歩と変遷を強く感じた。
しかし、やはりDV対策においては、被害者保護と加害者更正が車の車輪であってはならない。 あくまでも、被害者支援が優先であることが、前提であることを忘れてはならない。

[2]分科会の改正DV防止法・基本計画
 2日目は、次の@〜Hのテーマに分かれて分科会が行われた。
@ 改正DV防止法・基本計画
A 加害者処罰と再教育制度
B 改正DV防止法と警察・裁判所
C 医療関係者との連携
D サポーターのためのセルフケア
E DVと児童虐待
F マイノリティ女性とDV
G 当事者の提言
H DV根絶と国際ネットワークの形成
 私は、岡山県も男女共同参画社会の基本計画である「ウィズプラン」が、平成17年度をもって終了することから、平成18年度以降の新プラン「新おかやまウィズプラン(骨子案)」の策定に取り組んでいる所であり、県の基本計画の中にもDV防止政策は大きな課題であるため、@の改正DV防止法・基本計画の分科会を選んだ。

〈愛知県のケース〉
 愛知県女性センターからの報告から、女性の抱える様々な問題について、面接・電話による相談を行う中で、夫等からの暴力により家に帰ることのできない女性に対し、一時保護を行ってきたが、年々増加している。平成16年度の件数は、面接3,151件(うちDV1,080件)、電話相談6,993件(うちDV466件)、一時保護は前年比15人増の263人、保護命令は前年比11件増32件。
 平成14年4月1日より、上記センターに「配偶者暴力相談支援センター」としての機能が付与され、また平成16年6月改正、12月に施行された「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(いわゆるDV防止法)により、DVに関しては、面接、電話相談、一時保護、保護命令、すべてにおいて増加した。
 特に、保護命令に関しては、平成15年26件に対し、平成16年38件と大きく上回っている。保護命令はいずれも配偶者への接近を6ヶ月禁止する「接近禁止命令」で、うち10件は子どもへの接近禁止を含み、3件は過去も命じたものとなっている。
 そこで、愛知県では、「DV被害者支援基本計画」の検討が進められている。この計画については、担当委員会、審議会で計画案が作成され、この全国シェルターシンポジウムの時も、パブリックコメント制度に基づいて、県民からの意見提出を行っているところである。担当は、愛知県健康福祉部医療福祉計画課保護・支援グループ。9月28日まで意見募集した後、12月議会に提出する予定である。

〈北海道のケース〉
 北海道では環境生活部男女平等参画推進室が中心となって、「北海道配偶者暴力基本計画(仮称)」の策定が進められている。愛知県と同様、広く道民の意見を聞くための説明会やパブリックコメントが集められているところだ。特徴は、自立支援と加害者再生まで含められている点である。道民からの自立支援についての意見は、次の通りである。
就業の促進
・ 北海道は最低賃金も低く、中高年女性の就業先は決定的に少ない。就労支援は自立支援施策の核心である。北海道は、独自の就労支援施策を確立する必要がある。女性たちを積極的に雇用する企業ネットワークを作り、北海道としての優遇策を講じてはどうか。
・ DV被害女性の中には、技術・資格・経験を持つ人々が多数存在するが、仕事を投げ捨てて脱出するために、キャリアの継続を果たすことが難しい。こうした女性たちのスキルアップのための支援策や、企業のための資金援助施策等を考慮すべきである。
住宅の確保
・ 優先入居措置にとどまらず、公営住宅の一定量をステップハウスとして確保すべきである。
・ 民間アパート入居に際する前家賃、敷金等の補助、保証人肩代わり制度、DV被害者を優先入居させる不動産ネットワークの形成などに取り組むべきである。
・ 安全確保、危険回避のための個人情報保護システムが役に立たない。住民基本台帳の閲覧制限はしても、年金、保険、運転免許、児童手当、公共料金自動引き落とし預金口座等々の番号から、居場所を突き止められるケースが頻発している。むしろ、住基ネットシステムによって、加害者の追跡が一層容易になっている。北海道は、住基ネットの完全ブロックに取り組んで欲しい。
・ DV防止法の改正過程で運用の改善が図られているが、市町村によっては、対応のバラツキがある。健康保険の切り替え等、警察や援助センターによるDV被害証明を持参しなければ手続を開始しないところがあると思えば、当事者の申告で速やかな取り扱いをするところもある。当事者の安全を最優先にして、可能な行政手続を一元化して欲しい。
また被害者保護においては、道の機関だけでなく民生児童委員や人権擁護機関、さらには市町村や民間シェルターと連携するようにしている。
 特に札幌市については、自立支援センターを道とは別に独自に設置しているだけでなく、その自立支援センターの運営を民間シェルターを運営しているNPOに委託していることである。
 これは全国に類はなく、それだけ札幌市内の民間シェルターの歴史(経験)があることと、市と民間シェルターとの信頼関係ができているということで、パートナーシップ(協働)の観点からは、理想的な形態である。
岡山の民間シェルターも目指すところだ。

〈岡山県のケース〉
 岡山県は、「男女共同参画社会は、男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受し、かつ、共に責任を担う社会」との認識の下、男女共同参画社会の実現を目指し、平成13年3月に策定した「おかやまウィズプラン21」や平成13年10月に施行された岡山県男女共同参画の促進に関する条例に基づき、各種施策を総合的かつ計画的に推進してきた。
 平成16年に実施した県民意識調査によると、固定的な性別役割分担意識には改善の動きが見られるなど一定の成果があがっているものの、社会の各分野で男女平等になっているとは意識されていない状況にある。
 さらに、近年、夫やパートナーからの暴力防止対策の充実が求められるとともに、性と生殖に関する健康と権利の重要性も増している。これらの諸課題に対応するため、「新おかやまウィズプラン」を策定し、男女共同参画社会の実現を目指して、施策を総合的かつ計画的に推進してきた。
 そして、今平成18年度以降の基本計画となる「新おかやまウィズプラン」の策定に取り組んでいる、このほど新プランの骨子案を取りまとめ、県民等から意見を募集するとともに、県内3会場で「県民の意見を聴く場」を開催する。それらの意見は、取りまとめた上、男女共同参画審議会等に報告し、新おかやまウィズプランに反映させていく。
新おかやまウィズプランの特徴は次のとおりである。
(1) 県民、ボランティア・NPO、事業者
・企業など民間と行政が手を携えて活動していくパートナーシップの考え方を盛り込んでいく。
(2) 施策の効果が検証できるように男女共同参画についての現況数値を明記し、可能な限り数値目標を設定する。
(3) 男女共同参画社会の実現に向け、施策を充実し、さらに新たな取り組みをしていく。
具体的には
@ユニバーサルデザインの考え方の普及を推進(新規)
A県の入札参加資格制について男女共同参画の視点の導入を検討(新規)
B夫・パートナーからの暴力防止・被害者保護対策の推進(充実)
C農林水産業における家族経営協定締結を促進(充実)

[3]まとめ
 今回のシンポジウムに参加したことにより、特にDV施策に先進的な県からの報告は大変参考になった。
 また、岡山県では、暴力防止そのものの基本計画を策定するわけではないが、「新おかやまウィズプラン」の中にDV根絶に向けての新しい取り組みを盛り込んでいくつもりだ。
 また、今回のシンポジウム1日目夜の交流会で参加した全国の女性国体や民間シェルターと知り合いになり、徳島県議会10月議会における、一部の団体からの、国の「『男女共同参画基本法』の廃案を求める請願」に対してもネットワーク的な動きをすることができた。



「愛・地球博」の「岡山県の日」報告書

日時:平成17年4月14日(木)13:00〜15:30
会場:「愛・地球博」長久手会場EXPOホール
(1) 視察目的
「愛・地球博」には、世界に伝えたい伝統芸能や文化イベントなどを各都道府県が紹介する日が設けられており、「岡山県の日」は、4月14日(木)である。
「岡山県の日」では、備中神楽の上演や倉敷天領太鼓の演奏、また、いよいよ今年開催される「晴れの国おかやま国体」と「輝いて!おかやま大会」を紹介するための森末慎二さんのトークショーなど、盛りだくさんの内容で、岡山県をアピールすることとしているため、担当委員会委員としての協力と応援で参加した。
(2) 視察内容
・ステージイベント(13:00〜15:00)

プログラム主な内容
オープニング知事あいさつ、映像による岡山県紹介
備中神楽備中成羽社による「吉備津の舞」の上演
クイズ観光、物産、文化などのクイズで岡山県を紹介
倉敷天領太鼓「麻竿(あさお)の音」「瑞穂の響」の演奏
国体PR「キラリ☆トライアングル」の森末慎二さんのトークショー
アカペラコンサートベルベット・ポーのコンサート
エンディング出演者による合唱

・ホワイエ展示(全日)
観光名所、特産品、文化、国体をパネルなどの展示によりPR。
おかやま観光フレンズが紹介やパンフレット配布を行う。
(3)岡山県の意気込み
 今、名古屋で開催されている「愛・地球博」の期間、世界に伝えたい伝統芸能や文化・イベントを各都道府県が紹介する日が設けられており、「岡山県の日」は、そのトップを飾る。一番目を獲得したことで、岡山県が今度の国体に対して、単にスポーツの大会だけでなく、岡山県を丸ごと見せ、観光や文化の発信をしたいかが伝わってくる。
 さらに、当日のホールには、岡山県民の有志からなるグループが岡山県産の名品などでアレンジしたリースを作って会場を飾るなど、県民を巻き込んでのPR活動をされた。
 当日も、芸能を披露する国体やリースを作ったグループなど、会場にも岡山県から多くの県民が応援に駆けつけていた。
 もちろん知事、議長をはじめ、関係者は始まる前から会場前で呼び込みをするなど、積極的にPRをされており、また、知事はあいさつの中で、お得意の「もてなすんじゃー」を披露された。
(4)全体について
 会場内には、ほぼ満席となり、まず知事のあいさつの後、備中神楽と倉敷天領太鼓が紹介された。備中神楽では、吉備の国を治めた吉備津彦命が温羅(鬼)を退治する物語が備中神楽独特の激しい動きとコケティッシュな語りで表現され、中でも見せ場での矢喰いの合戦では、会場内から初めて見るおもしろさによる笑いと感動で満ちていた。
 また倉敷天領太鼓は、パリ公演など海外でも着実に名声を上げている実力集団で、今回も大迫力に会場内が息をのむ緊張感が続いた。
 岡山にこんなすばらしい芸能があったことに改めて私自身も感動すると共に、このような芸術を全国に発信できることを誇りに思った。
(5)晴れの国おかやま国体のPRについて
 今回の国体には特別応援団として「キラリ☆トライアングル」を結成し、水泳の木原みち子さん、体操の森末慎二さん、マラソンの有森裕子さんが、それぞれ全国各地でPR大使として活躍していただいている。今回は、森末慎二さんより学生時代の国体の思い出やオリンピックで金メダルを取ったときのスポーツ選手としての勝利を意識しての緊張や期待に応える重圧の話など、表面のすがすがしい笑顔の下の苦労話が会場を納得させた。
 また、国体の思い出では、今回のおかやま国体も多くの県民が協力しておもてなしをする民泊の時の話や、選手同士の交流の話、またその町にはいると全ての人に「頑張ってね」と声をかけられたときの嬉しさなど、私たちが国体の開催地として全国から選手を受け入れるに当たっての心構えを改めて聞かされたようだった。
 つまりここで、全国の方も同じようにこの話を聞き、岡山では一人一人が全国からの人々を大歓迎の下、受け入れているという気持ちで訪れるということを忘れてはいけない。
(6)まとめ
 最後に「晴れの日おかやまクイズ」として岡山の名所や特産品などをクイズにして正解者にはそれらをプレゼントした。会場は大変盛り上がり、また知事のあいさつ等、しっかり聴いていた聴衆からは正解者続出で、商品を巡って激しいデッドヒートになった。
 私は、国体局も担当する総務委員会の委員として、県が他県で行うPRには協力者としてはもちろんのこと、反応を確かめるために今回参加したが、「愛・地球博」という限られた会場の中ではあったが、人々の反応がよいことにおかやま国体への成功の手応えを感じた。
 これからは閉会式の申込等、具体的な手続に入っていく、今からどこまで県民全体が気持ちを一つにして、おかやま国体を盛り上げようという機運を持ち、おもてなしできるかが重要だ。
 国体の是非の議論はあるにしても、おかやま国体は目前。何としても成功させたいものだ。


「人命を守るナショナル・スタンダードを」全国シンポジウム報告書

テーマ:〜「地方分権」で子どもや女性の命が守れますか?〜
場所:お茶の水女子大学
日時:平成17年2月11日午後1時〜4時

岡山県議会議員 姫井ゆみ子

(1)調査の目的
 地方分権社会への移行が、大きな流れとなっている。私は以前より、国や中央に依存した体質が地方を弱くし、引いては国を弱くしていると思っている。つまり、地方の再生が日本の再生であると主張してきた。ただ一方で地方分権の名の下に、国の負担をすべて地方へ負担させていくというのも困る。もっと困るのは、負債を地方に負わせることだ。もともと明治以来、中央支配の歴史の中で、かつての地方の自主自立(自律)は薄れており、地方分権社会に変わるからといって、国と地方の体質が十分変わらないままにすべて地方へ権限を移すのは、危険である。地方の足腰を強くする施策や補助をして、様子を見ながらの移行でなければ、準備不足のスタートで1番迷惑するのは、国民いわば市民である。そしてとりわけ弱い立場の子どもや老人である。
 三位一体の改革の下に、国がリードしてきた福祉や教育に関わる事業を地方自治体が主体的に行う体制にしようとしている。市民に1番身近な自治体がこのような事業を責任を持って実施することは、当然のことであり、自治体にその力量がないとは思っていない。だが一方で、福祉や教育の場面では、行政サービスの全国的水準が満たされていないといけないと考える。
 今回の「人命を守るナショナル・スタンダードを全国シンポジウム」は、特に現代社会の問題となっているDV(ドメスティック・バイオレンス)や、児童虐待等を通して、地方分権の渦の中でこれらの施策が地方はもちろんのこと国としても、縮小していくことのないよう、国に対する発信も含めて全国ネットで取り組もうというものである。
 DV対策では民間シェルター主宰者の第1人者である「おんなのすぺーす・おん」代表の近藤恵子さんがコーディネーターであり、またDVに関しては取り組みが決して早くなかったにもかかわらず、数年前、県で取り組みを始めたかと思うと昨年全国シェルターネットワーク会議を開催するなど、めざましい発展の鳥取県知事がパネリストの1人でもあるということで調査した。
(2)全国シェルターシンポジウム報告
 コーディネーターの近藤恵子さんは、毎年全国各地で開催される「全国シェルターネット」の運営委員であり、自らも民間シェルター「おんなのすぺーす・おん」を主宰している。まず昨年10月に鳥取県米子市で開催された「全国シェルターネットワーク会議」の報告がなされた。
 DV施策に関する自治体間の格差が資料と共に報告され、現時点では格差というよりほとんど手が付けられていない自治体が多いことが指摘された。今後、自治体独自で取り組むこととされたときには、さらに取り組みを進めるところと、新たに始めるところの一方、全く取り組む姿勢を見せない自治体も考えられる。DVにおいては、ある県での被害者は、他県に逃がして支援する方法が有効であり、少なくない。よって、ある一定以上全国レベルで、支援施策が充実している必要がある。そこを一つとっても、このままでの地方分権の名の下の三位一体改革で、国から地方に事業の主体が移ってしまうのは、不安要素が残る。
(3)児童虐待対策費等の税源移譲と子どもの「いのち」を守るナショナル・スタンダードについて
 パネリストの駿河台大学 吉田恒雄教授は、「児童虐待防止法の改正を求める全国ネットワーク」の調査研究や、活動を報告すると共に全国ネットを呼びかけた。
 三位一体の改革による児童虐待対策費等の税源移譲案が出された。それによると、厚生労働省全体9,454億円のうち、児童関係4,475億円である。
 その内訳は、児童養護施設等措置費が615億円、児童虐待対策費が106億円、子育て支援対策費が260億円である。
 しかし現時点においてさえ、全国の自治体に予算の使い方において、格差がある上に、全国の知事・市長と児童福祉の現場を担う例えば児童相談所長の間にも福祉施策における予算の使い方にズレがある。
 具体的なケースとして、児童相談所に所属するケースワーカーがその地域の児童何人見なければいけないか−というケースワーカー1人当たりの児童数のデータでは最も少ない青森県の28,934人に1人と最も多い。岐阜県の117,094人に1人では、ゆうに4倍もの差がある。
 児童虐待への対応は、児童の生命に関わる緊急の課題である。平成11年には、虐待相談件数は11,631件であったが、平成15年は26,573件と2,3倍増である。しかしこの分野の取り組みは、先のデータが示す通り、大きな地域格差があり、6割の自治体は、児童相談所のケースワーカーの配置において、地方交付税の基礎すら満たしていない。つまりこのような状態のままでの税源移譲は大変危険である。まだまだ国のリーダーシップによって、とにかく全国が標準レベルになることが不可欠。それが当たり前の支援を受けとめられる自治体が100%でない限り、移行後の地方自治体での行政サービスが充実される県は少ないだろう。
(3)自治体における市民参加型−協働の経過と現状について
 (財)地方自治統合研究所の光本伸江研究員からは、日本における市民からの意見反映の経過と現状を踏まえた報告がなされた。
 今後、中央集権社会から地方分権社会になれば、中央(国)から使い道を定めないお金が地方に交付され、国の指示ではなく、地方が独自に、権限と責任で施策を創っていくことになる。そこでは、真に地方に根付く活動や地域を生かす施策にするために市民の意見や声を聞くだけでなく、それを施策に取り入れる「市民参加型」の仕組みが構築されていなければならない。日本の市民運動の歴史や問題点を検証することにより、さらに市民団体同士の連携やネットワークを強化して、自治体のパートナーとして企業等と同等に「協働」の役割を担っていかなければならない。
 かつて、日本は公害運動や自然保護運動から始まったが、その後リサイクルや育児・介護等行政の市民生活や福祉に関わる活動が主流になった。
 よって、「抵抗・反対」から「協働」へと変わってきたことで、市民活動は日本の地域社会では不可欠となった。しかし、一方、市民活動には民間企業等に比べ、人、金、情報等資源の不足により、行政と対等の立場での協働には至らなかった。
 しかし、NPO法の成立や市民活動の成熟にともない、また行政においてもパブリックコメント等、市民の意見を取り入れたり、市民と連携する仕組みを作ることによって、自治体内での市民参加型・協働体制で政策能力も上がってきている。
 今後、分権社会になり、ますます市民・市民団体と自治体の連携により、地方の政策能力の水準を向上させていくことが必要、急務である。
(4)鳥取県における市民協働について
 昨年、全国シェルターネットワーク会議を開催するなど、DV部門はもちろんのこと、市民協働の県政で注目を集めている片山善博鳥取県知事が、鳥取県での協働の仕組み作りについて報告された。特に、鳥取県「配偶者等からの暴力防止及び被害者支援計画」の策定については、パブリックコメントで広く意見を募集することはもちろんのこと、シンポジウム等でしっかりと策定目的等理解を得るような状況をつくった上で、意見交換する形で、県民の意見を取り入れるなど、ごく一部の人の意見だけでない配慮が見られた。さらに、DV当事者に参加してもらっての意見交換など、関係者にとっても納得のいく支援計画ができている。
 片山知事は、「行政や議会は現場にもっと足を運ぶべきだ。そして、県民と行政、議会のノーマライゼーションが必要だ。」と指摘した。行政や議会が現場を知れば、必ず福祉や文化、そして人権に問題があることがわかる。また、県民からも「かかりつけの議員」を持って、現場の声を伝え、活動を一緒に取り組むことが大事だと話された。
(5)人権問題について
 鳥取県在住のエッセイスト朴慶南さんは、外国籍市民という立場から、文化の違いや生活習慣の違いから差別という人権問題に発展する恐ろしさを話された。また外国籍だからこそ受ける暴力、そして一度暴力を受けたものが心身共に社会復帰することの難しさを体験から話された。そして、最後に行き着くところは、結局「参政権」がないということの足下の不安定さ、権限に差別を与えられているような疎外感で、正当な権利でさえ行使できない理不尽さが報告された。
 ただ、現在住む鳥取県では、意見を県政に吸い上げてくれる場も増え、DV支援を行う女性団体とも連携して支援を受けられる体制ができたことも報告された。
(6)国会議員の報告
 当日は女性の国会議員が会場報告者として出席されており、円より子参議院議員、神本美恵子参議院議員、福島瑞穂参議院議員、石手えい子衆議院議員がそれぞれ発言された。さらに、山本保参議院議員からもメッセージをいただいた。
 特に、円より子さんからの発言は興味深かった。
 「2002年に議員提案で、母子家庭の就労を支援する法律を作り、予算を約11億円付けることに成功した。各地域で喜んでいただいているだろうと思っていたら、調べてみると使われた県は、たった1県でしかも200万円。それはどういう事かと2003年3月の国会の決算委員会でその旨を指摘したら、そのことが新聞で取り上げられた。」というものだった。
 私は、さっそく岡山県に帰って調べてみたら、案の定2003年は予算化されておらず、2004年から「母子家庭等自立支援費」で19,171,000円付けられていた。具体的には、@母子家庭等自立支援給付金事業費、A母子家庭等終業・自立支援センター事業費、B母子家庭等電話相談事業費の3種類である。2004年は11人が利用し、2005年度も11,529,000円予算化されていました。
 本県になぜ2004年からなのか尋ねたところ、2003年以前は、こんな予算があることがわからなかったという。一年ではあるが、困った立場の者にせっかくの予算が使われなかったことが悔やまれるが、一方、市民身近な地方行政だけでなく、国の予算にも目を光らせるべきだと思った。
(7)まとめと岡山での取り組み
 当日は、全国から200人以上の参加者があり、会場を変更するほどであった。各パネリストからの報告も興味深く参考になったが、会場からの数々の発言が印象に残った。特に、以前米国に在住していた女性でDV当事者であることを明言されて、「DVについて日本は、女性が女性を非難することが少なくない。アメリカでは、それは男性がよくないという共通認識が全てにあり、女性から非難されることはなかった。」と述べたことだ。さらに、会場からは「もっとDV加害者の責任を前面に出すべき、なぜ被害者の方が逃げ回ったり、社会に対して後ろめたい気持ちにならなければならないのか。」「行政、特に厚生労働省の担当者は、DVの当事者サイトもあるので、積極的に情報交換して欲しい。」また、円より子議員の発言を受けて、「児童扶養手当等の児童制度は、日本は国際的に立ち後れている。」など、積極的な発言が多く出された。
 私は、4年前より岡山でNPO関連予算のヒアリングを開催してきた。それは、4年前より私の所属する民主党が東京において、全省庁のNPO担当者を集めて、1日がかりでNPO関連予算の公開ヒアリングを始めた。そして「できれば、各自治体で、自治体とのNPO関連予算ヒアリングを行い、国と自治体との間で十分NPO関連予算が生かされているかチェックして欲しい。」という要請があったからだ。
 2月議会で予算の承認を受けた後、民主党より国のNPO関連予算の説明ができる講師を招聘して、また一方岡山県より、生活環境部県民生活課のNPO担当の方々に開いていただき、一堂に会して両方の予算の公開ヒアリングを行ってきた。
 しかし、参加者は国と県のNPO予算の両方が提示されると、国の予算や、国と県を比較することより、県の予算に関心が高く、質問も県の予算だけになってしまっていた。その光景の中で、果たして県にあって、国のNPO関連予算の公開ヒアリングをすることは必要なのかと迷い始めたとき、円より子議員の発言や、それを裏付ける調査をしていく中で、やはり地方だからこそ、国の予算をしっかり知っておく、見る目を養う必要があると思った。
 さらに、今年は国の予算は1月に決まるのに、県の予算が確定する3月まで待って、両方の公開ヒアリングをするのは惜しい。つまり、国のヒアリングした結果が県の予算に反映されないと、2月はじめに国の予算、3月中旬に県の予算を別々に行い、今にない成果を見た。
 最後に岡山県のNPO関連予算の公開ヒアリングの時、今まではNPO関連の部署だけがきていたが、今年は全部署の担当者がきて、予算の説明をした。国の時は、10省庁きていたが、県レベルで全部署が一同に説明にきてくれるのは、全国初ではないかと思う。しかも、それが県民からの要請ではなく、県当局から積極的に対処したことは、さらに特筆すべきである。
 地方分権が進み、これから行政と県民との連携や協働がますます重要になってくる時に、岡山県があらゆる分野でこのことが理解され、実行できるように私も応援していきたい。


全国自治体議会 議会改革シンポジウム(2005.1.17)報告書

岡山県議会議員 姫井ゆみ子

(1)調査目的
 岡山県においては、議会運営委員会において、予算委員会の設置や委員会の傍聴、また代表質問・一般質問での一問一答方式等、予算編成・予算審査の充実や中身の濃い議論に向けて、議会審議の活性化について討議を重ねてきたところである。
 私は、現在は、自治体議会議員となって、二期目6年を迎えるが、岡山県議会で決められた方法の中で、いかに県民の意見を正確に伝え、改善が必要なら実現するよう努力してきたところである。
 この6年の中で、近県の自治体議員と交流する機会に恵まれ、議会運営の方法等意見交換したところ、議長の任期から始まり、質問時間の配分や再質問・再々質問のやり方、また委員会等の傍聴から、議会での通告方式ではないところで一問一答方式の導入など、岡山県とは異なる運営方法が随所に見られ、驚かされた。
 岡山県の議会運営委員会に参加して、発言できる人は限られているし、私はその権限を持たないが、議員の一員として、所属会派を通じて意見を託すことは可能である。
 この度、著名な講師や先進的な自治体の議員等が講師や、パネリストを務めるシンポジウムに参加し、調査・研究することで、岡山県の議会活性化に向けて、よりよい提言ができることを目的に参加した。
 最後に、一つだけ断っておくことがある。申し込み当時(平成16年12月)気づかなかったが、シンポジウムの当日である1月17日は、私の所轄する「決算特別委員会」開催日であったため、終わり次第、新幹線で向かったが、基調講演には間に合わなかった。
 よって、パネルディスカッションのみの報告とさせていただく。

(2)パネルディスカッション テーマ「議会改革」
 コーディネータの大森 彌(おおもり わたる)氏は、基調講演の講師でもあった。現・千葉大学教授、東京大学名誉教授。数多くの自治体の行革委員を歴任し、都道府県議会制度研究会座長を務める。
 パネリストの千葉 正美(ちば まさみ)氏は、議会運営が進んでいるといわれている宮城県議会において、更なる活性化を求めて、改革を進める議会改革推進会議の会長である。
 パネリストの襲田 正徳(おそだ まさとく)氏は、今回このシンポジウムの呼びかけ役であり、後援をしている全国都道府県議会議長会の事務局長である。全国の議会制度について情報があると共に、内閣府で政策統括官や審議官を歴任している。
 パネリストの妹尾 克敏(せのお かつとし)氏は、松山大学法部教授。松山市議会の議会改革に携わり、地方自治法の研究家として活躍している。そして最後のパネリストは、今回のシンポジウムの主催者である「三重県議会議会改革推進会議」の岩名 秀樹(いわな ひでき)会長は、8期目の三重県議会議員で、第88代、97代の議長も務めた。

(3)地方自治法第96条について
 まず、妹尾氏は、議会における「地方」という定義の曖昧な点を示し、地方議会とは言わず「自治体議会」と提言した上で、「議会改革」の柱は、「議決権」にあると指摘した。つまり、地方自治法第96条第1項で議決できることを限定列挙されている点の限界の打破が不可欠であり、96条2項で掲げられている「任意的議決権条項」の拡大解釈が必要であると述べた。つまり、議会自らの条例制定することで、議決権、つまり議会の権限を拡大でき、それにより議会改革も自らの手で行えるということだ。
 岡山県議会でも議会のことは、まず議会運営委員会、通称「議運」で決められている。議運の専決事項については、知事以下県当局は答えられない。つまり、言う権限がないと言い続けられているが、結局は議運の運営も議会主導というよりは、他の常任委員会と同じように県当局がいなくては進められない。議会運営というものを私は、今まで議員の発言や、提案のチェック機関的な役割しか見えていなかったが、もっと根幹の部分に踏み込んだ改革のできる委員会であることを実感した。しかし、一方議会は合議体であり、少数意見や革新的な意見より、多数決が優先される。厚い壁はそこにあり、やはり一人ひとりの議員の議会改革意識が求められる。
 さらに妹尾氏は、議会の議決権の二本柱、@条例制定とA予算承認の予算について、果たして、予算書の読める自治体議員が何人いるのかを指摘した。複雑な行政予算について、増額修正、あるいは減額修正を申し述べたいという議会は少なくないが、予算については、行政マンに比べて素人である議員に務まるはずはないという。
 私も、6年前議員になって以来、特に岡山県は行財政改革は最重要課題であると。努めて、議会では行財政や予算についての質問をし、行財政について最も多く議論をする総務委員会に籍を置いてきた。よく議員に対して、何か専門分野を持つようにといわれる。なるほど県政の課題は広く、すべてに精通することは不可能である。しかし、一方私は、すべての課題に共通する点が予算であり、つまり行財政であると考える。
 よって、行財政+専門分野であるべきと思っている。

(4)地方自治法96条第2項但し書きについて
 一方、襲田氏は、96条2項但し書きの問題点を指摘。いくら2項で、任意で条例制定が許されるとしていても、但し書きにより、義務を課するような権限(条例制定)は、制限されている。つまり、あまり効力のないあいまいな条例しか、任意では制定できないということだ。ここで、何が条例か、つまり、何が法律かまで遡って議論し、解釈を進める必要性がある。国との差にも注目しなければならない。
 国会は、国の最高機関であるがゆえに、あらゆる法制定が可能である。一方、地方議会いや、自治体議会は、地方自治法の中で制定された議会であるがゆえに、地方自治法の枠を超える動きはできない。
 そこで、ユニークな提案を試みたのが、岩名氏が発言した「三重県議会特区構想」である。平成16年に、議会招集や常任委員会複数参加等、4つ項目を付加した特区構想を国に提案。
 同年12月には、内閣で再検討され、今年1月に地方制度調査会でも検討された結果、1月14日に、「地方自治法という制度の根幹にかかる問題ゆえ特区不可」の決定がなされた。
 私は、このような動きが、三重県議会のみならず全国都道府県議会議長会も巻き込んで、行われていたことを初めて知り、議会改革の熱い思いに感動した。自立と自律は一体である。
 自らの力で自己改革していくためには、それだけの責任を覚悟すると同時に、それだけのことができる権限が付与されていなければならない。そして1人の力が、1つの議会で挑戦するには大きすぎる。このようなシンポジウムを開催し、多くの仲間たち(全国の自治体議会や自治体議員)に呼びかけ、同志を募ることにより、「点を線に、線を面に」そして、全国ネットの運動としてすべきである。
 岡山県議会の問題意識だけで参加した私にとっては、まさに「目からうろこ」のシンポジウムであった。

(5)まとめ、感想
 議会改革を進めることにより、議会経費の削減を図る一方、議会の活性化のためには、議員や議会を支える政務調査室の能力アップと議会事務局の人員も含めての充実が必要とのことであったが、年々、行財政改革の下に、議会事務局の人員が減少している議会もあった。
 しかし、今回ホスト役でもある三重県議会では、議会内に「三重県議会議会改革推進会議」を設置し、議員団が一枚岩となって、国の制度や執行部と戦っている様子を知り、岡山県議会では、国会のミニチュア版のように、対自民党という多数政党(多数議員団)への対策が中心となるような構造では、議会改革はできないと思われる。国との違いを生かして、対県当局、対国に対して、改革のために物申す議会を目指したい。
 最後に、シンポジウムに付きものの質疑応答でも活発な意見交換を繰り広げられた。また今回の資料も各県(議会)を比較して、見やすく、役に立つ。ちなみに、独自の条例が多いことで目につく県は、宮城県と鳥取県である。そして、地方自治法96条2条2項によって、議会の議決を拡大したケースになる「岡山県行政に係る基本計画の議決等に関する条例」は、2月議会を通過した。


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