平成14年4月20日:「乱された渓の調査に」

はじめに


 今回の釣行は単純に釣りを楽しむ・・だけではなく、憂慮すべき渓の問題を
 自分の目で確かめるための釣行となった。
 今年の解禁から暫くした時期に、ネット釣り仲間のコージさんから
 「某渓に本来居るべきではない魚種が存在するんです。一度見に来ませんか?」
 「今後どうしていくべきか、考えていきたいんです」との話を伺った。
 前夜合流の日帰り遠征の無理をお聞きいただき、実態調査と相成ったのである。
 コージさんの地元まで電車。駅でピックアップしていただき、よもやま話とともに
 「目的の渓は本来アマゴのみ」であることを伺いながら渓を目指した。



入渓

入渓には大高巻が不可避

 今回目指す渓には、大釜を備えた大滝を越えなければならない。
 とても直登は無理。そのため大高巻きとなるのであるが、
 初めて入渓されたときはかなり大変な目に遭われたとのことである。
 また、ルートが解りづらく、帰路では危うく遭難しかかったとか。
 その時の教訓から往路では目印を木に縛りつけ、帰路のルートを
 間違えないための手配を施していった。
 写真は目印を付ける様子を3mほど離れた位置から撮影したものだが
 巻道の傾斜の急なことがお分かりいただけると思う。
 それ程入渓に大儀する渓なのである。

自然な流れに暫し釣りを楽しむ


 一昨年の大高巻きを遥かに凌ぐ大々高巻きの後に無事入渓。
 「暫くはこんな感じの自然な流れです。」の言葉に先ずは釣りを楽しむ。
 ネイティブ種のアマゴにイワナが混じり、2人の竿を曲げる。
ネイティブアマゴ

 楽しい釣り風景を幾つかご紹介。

 1)同じイワナを3度釣る某ホストさん
  Host「ほらー、やっぱし居たじゃん」
  Gest「普通ゲストを差し置いて釣るかなぁ?(笑)」
  Host「がはは、あ!?バレたぁ・・・もう一度食うかな??それ!」
  Gest「そりゃーないでしょー!え!?マジ?食ったしー!」
  Host「がはは、ありゃ!?また外れた・・いくらなんでももうダメでしょ?それ!」
  Gest「・・・こいつアホや。また食ったし(爆)」
  ・・・入れるほうも入れるほうだが、3度も掛かるイワナも相当なもんだ(爆)

 2)ゲストのトラブルの隙に釣る某ホストさん
  Host「ここ、絶対出ますよ。どーぞ。」
  Gest「それじゃー・・・それ!」・・・目印が止まる。
  Gest「お!?来た?」・・・ガクッ、実は根掛かった(泣)
  Gest「仕掛け外すとここ潰しちゃうから、コージさんどーぞ」
  Host「それじゃー」・・と、根掛ってる横筋で9寸一発!なんだかなぁ??

 3)顔面からズッコケル某ゲスト
  遡行を楽しむ途中、自分の腰から下げた袋を踏みつけてバランスを崩した某ゲスト。
  そのまま踏み出した右足の下に浮石が。顔面からズッコケタのでした。
  幸い治療中で前歯が無かったおかげで大事に至らなかったとか?(自爆)
コージさん、正に調査隊!  上の木に引っ掛けた図のような・・


不自然な人工物・・堰堤・・そして堰堤上流へ


 楽しい遡行の中、正に唐突に不自然極まりない人工物が姿を現す。
 砂防堰堤である。この場所に何故必要なのか、まったく理解しがたい代物である。
 プールには無数の渓魚(イワナであろう)が呑気に泳いでいたが、何故かその姿は
 ”学校をサボった学生がゲームセンターでうろついている図”を連想させた。
 早々にやり過ごし、いよいよ問題の区間に突入した。

 堰堤直上では2本の沢が出会っていた。
 出会いの位置に堰堤・・・本当に何の意味があるのだろうか?
 大きな疑問を抱きつつ、あらためて調査を開始した。
 「右沢はイワナの渓です。まずはそちらを調査しましょう」とのことで右沢に。
 魚影が途絶えるまで遡行する。小さな落ち込みでは必ずと言っていいほど
 イワナが水を割って飛び出してくる。
 渓の規模は小沢と言っていいほどに狭く、魚影の見えなくなるまでの区間は
 私の予想よりも遥かに短いものであった。
 イワナがスレていないと言えばそれまでだが、本当にアマゴの渓なのか?と
 疑わしくなるほどのイワナの魚影であった。
コージさん、イワナ9寸  私、イワナ9寸

 そして「次はハイブリッドの渓に行ってみましょう」・・・左沢である。
 右沢にも増して細い流れであった。実釣開始程無くして4寸ほどのアマゴが飛び出す。
 が、次のポイント、そのまた次・・・この渓には絶対居ないはずの”ヤマメ”が。
 皆4寸ほどの型揃い。つい最近放流されたような感じである。
 暗鬱な気持ちでいるとコージさんの呼び声「出ましたよ。ハイブリッドが。」
 5寸程の鯖にも似た斑紋の魚体。アマゴのパーマークにイワナの鰭。
 何がどうなってここに居るのか?
 結局ハイブリッドは1尾のみであったが、ヤマメの存在とともに悲しくなる事実である。
 そして、イワナもこの渓においてはネイティブでは無いのである。
居てはならないハイブリッド
 注)ハイブリッド:混血種/雑種、このレポートではアマゴとイワナの雑交配種のこと。


退渓


 程なくして流れは渓魚を抱くには細すぎるものになった。
 「そろそろ戻りましょう」コージさんのお声掛けを合図に遡上してきたルートを
 下っていった。
 入渓時の目印は絶大な効果を発揮した。
 「やっぱり、これが在ると無いじゃ全然違いますね」とコージさん。
 次の目印を目指しつつ、大高巻きの難所をすんなりとクリアしていった。
 最後、大高巻きの理由となる大滝下を探らせていただいた。
 残念ながらアタリは得られなかったが、釣りに関しては十分な満足感であった。
 今日目にしたことをあれこれと話ながら、着替え、そして帰路に着いた。
 途中、風呂で汗を流し、コージさん馴染みのお店で夕食をいただいた後に
 駅に送っていただいた。

 乱された渓の状況は憂うものではあったが、釣行としては気の許せる方との
 満足のいくものであった。
 ご案内をしていただいたコージさん、本当にありがとうございました。
 感謝いたします。


最後に・・・私なりの考察


 今回お邪魔させていただいた渓の憂うべき状況・・乱れた魚種の分布・・
 以下の考察を持って閉じさせていただく。

 1)堰堤の存在
   堰堤上の流程は両沢とも渓魚の住処としては十分な長さを有しているとは言い難い。
   堰堤により下流域と分断されているため、良好な渓魚の上下流交流が妨げられている。
   そのため、狭い範囲での異常な分布(棲み分けができない)が起こっていると考えられる。

 2)無秩序な放流
   一定の型のヤマメの存在から判断するところ、この区間では生態系を考えない
   無秩序な放流が頻繁に行われている可能性が高い。
   それが異常な分布に拍車をかけていると考えられる。
   ハイブリッドの存在に関しては、得られたサンプル数が不足しているため、
   雑交配によって生まれたものかどうかの判断は難しいところである。

 今後どうしていけばいいのか、現時点では巧い方法が解らない。
 ただ、今の状況を放置するわけにはいかないだろう。
 まずはこの場から警鐘を鳴らすことで歯止めの一助になれば・・と思う。



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